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湯河原の食と恵み・第2回

湯河原の旬カレンダー:山と海の恵みを、いつどこで

湯河原の食卓は、山と湾の季節で回ります。ほぼ一年続く柑橘、2月の梅、福浦の定置網の魚、冬のイノシシ。どれも勝手に採れるものではありません。いつ何が旬で、どこで味わえるかをまとめました。

福浦漁港 みなと食堂 →

黒い盆にのった刺身定食。漬物と魚のおかず、ご飯と味噌汁の椀が端に見える

福浦漁港 みなと食堂の昼ごはん。

写真: Matt Ketchum

山と湾のあいだで

湯河原は箱根の外輪山と相模湾にはさまれた町で、食卓もその両方の季節で回ります。2月には幕山のふもとで梅が咲き、段々畑ではほぼ一年じゅう柑橘が実り、福浦沖の定置網にはアジやサバが入ります。冬になると、山のイノシシがおつまみのメニューに顔を出すこともあります。柑橘や柿、びわ、栗についてはシリーズ第1回で書きました。今回は、季節ごとに何が旬になり、どこで味わえるかをまとめた旬のカレンダーです。

先にいちばん大事なことを言うと、そのほとんどは勝手に採ってよいものではありません。山道では植物を採らないよう求められ、海岸の大部分には漁業権があり、果物は農家のものです。湯河原で山と海の恵みを味わう方法は、獲る人、育てる人、料理する人を通すこと。日曜の朝市、漁港の食堂、農産物直売所、町のみかん狩り、そして正規のジビエを仕入れる店です。

採らずに、味わう

まずは山から。湯河原町のハイキングコースのページは、箱根外輪山のすそ野、幕山と南郷山のあたりに広がる草原のコースを「山菜の宝庫で季節によっては野生の花群がハイカーの目を楽しませてくれます」と紹介しています。同じページにはごみは持ち帰ること、植物・鳥・動物・虫などの採取や捕獲は絶対にしないことという呼びかけもあります。町はそこに育つものを誇りにしていて、だからこそ、そのままにしておいてほしいのです。山菜は道から眺めるだけにして、食べるなら店で。植物をよく知る人が採って、下ごしらえまでしてくれたものをいただきましょう。

この呼びかけには法律の裏づけもあります。環境省は湯河原町を富士箱根伊豆国立公園の関係市町村に挙げており、国立公園の特別地域では環境大臣が指定する植物の採取や損傷が規制されています。神奈川県も県立奥湯河原自然公園を、こうした行為に許可が必要な公園として挙げています。山のどこであっても、森林法では山菜やきのこを含む森林の産物を無断で採ると、森林窃盗に問われることがあります。人の木から果物をもげば、刑法の窃盗罪で、十年以下の拘禁刑または五十万円以下の罰金です。

植物そのものにも危うさがあります。2025年4月、神奈川県でトリカブトを食用のニリンソウと間違えて食べた食中毒が起きました。県の呼びかけははっきりしています。食用と確実に判断できない植物は、採らない、食べない、売らない、人にあげない。全国のこの10年で、有毒植物やきのこによる食中毒は患者数では全体の約0.8%ですが、死者は21人、食中毒による死者全体の約48.8%を占めます。海辺には海辺のルールがあります。神奈川県の沿岸は、ほとんどの海域に共同漁業権が設定されていて、アワビやサザエ、ワカメやコンブ、イセエビ、タコなどを組合員以外が採ると漁業権の侵害になるおそれがあります。県がつくった磯遊びのルールの短い動画を下に載せました。

動画

神奈川県の磯遊びのルール

神奈川県の県庁ニュースから。磯で採ってよいもの、いけないものを紹介する回です。

制作: かなチャンTV(神奈川県公式) ↗

季節ごとの一年

冬は柑橘とジビエ、そして梅。県西部の農協、JAかながわ西湘は露地みかんを11月中旬から3月上旬まで出荷します。神奈川県の狩猟期間は2026年11月15日から2027年2月15日までで、猟区以外のシカとイノシシの猟は2027年2月末まで延びます。この延長は湯河原町の一部の区域にも適用されます。県の魚の一覧では、ヒラメの旬は12月から2月。やがて梅が咲きます。幕山の湯河原梅林には紅白あわせて約4,000本の梅があり、次の「梅の宴」は2027年2月6日から3月7日まで。入園料は300円で、町民と湯河原町内に宿泊する人は無料です。歩き方は梅の見ごろガイドにまとめています。

動画

湯河原梅林と梅の宴

湯河原町観光課のチャンネルによる、幕山の湯河原梅林と「梅の宴」の映像です。

制作: 湯河原温泉観光(湯河原町観光課) ↗

春は湘南ゴールドと山菜の季節です。JAは神奈川県生まれの柑橘、湘南ゴールドを3月中旬から4月中旬まで出荷します。県の一覧では、マダイの旬は2月から5月、アジは3月から8月、シラスは4月から12月で、アジとシラスは相模湾沿岸で水揚げされます。春はすそ野に山菜が出る時期で、県のトリカブトの食中毒も4月のことでした。春の野草は、だれかがきちんと用意してくれた一皿でいただきましょう。

5月にはみかんの花が咲きます。湯河原観光ボランティアによると、花は5月の連休明けから下旬ごろまで。5月下旬から6月下旬には、JAが小田原曽我梅林を中心とする小田原・足柄地域の梅を出荷します。これは隣の小田原を中心とした地域の数字で、湯河原だけのものではありません。初夏にはびわも実り、詳しくは第1回で紹介しました。ひとつだけ覚えておきたいのは、熟した果肉は安全に食べられる一方、種子の粉末は食べないよう農林水産省が呼びかけていることです。

夏は魚と、その年最初のみかん。小田原・湯河原のハウスみかんは主に宮川早生で、8月中旬から10月上旬に出荷されます。ほかの柑橘が少ない時期の貴重な一つです。海では、県の一覧によるとゴマサバが6月から8月、マサバが8月から2月で、三浦半島と相模湾沿岸で揚がります。春からのアジやシラスも続きます。

秋はもぎ取りの季節。町のみかん狩りは2026年10月10日から12月17日までで、農園まで自家用車では行けません。料金や行き方はみかん狩りガイドへ。柿や栗はここではほとんどが庭の木で、第1回でも書いたとおりです。町は持ち主に早めの収穫を呼びかけています。湯河原町の周辺には約30頭のニホンザルがいるからです。11月15日にはまた狩猟期間が始まり、一年がひと回りします。

福浦の定置網

真鶴半島の西のつけ根にある福浦は、湯河原の漁港です。住所は隣の真鶴町ではなく湯河原町。観光かながわNOWに湯河原観光ボランティアが寄せた記事によると、夜明け前に船が戻ると、アジ、サバ、イワシ、イカ、季節の魚が上がり、漁獲の96%は定置網漁です。定置網は、仕掛けた網に魚が入ってくるのを待つ漁です。だから福浦のいちばん確かな旬のカレンダーは、その日の献立。何が揚がるかは、その週に網の前を何が通ったか次第です。

岸壁に並ぶ小さな漁船。屋根の下に魚箱が積まれ、背後に木々の茂る山
湯河原町の福浦漁港。2021年8月撮影。写真: 妖精書士 / Wikimedia Commons · CC0, cropped

食べるなら福浦漁港 みなと食堂へ。福浦漁協直営の定食屋です。ボランティアの記事は、漁師小屋を改装した店で、その日の水揚げで献立が決まると紹介していて、2026年11月で創業15周年を迎えます。営業は11時から15時(ラストオーダー14時30分)、水曜定休で、月に2回は水曜と木曜の連休があります。出かける前に電話で確かめて、現金を持っていきましょう。持ち帰るなら日曜観光朝市へ。毎週日曜の6時から9時まで、雨でも開かれ、目の前の海でとれた魚の干物が安く買えます。

イノシシが皿に届くまで

イノシシは山のもう一つの恵みですが、湯河原ではまず農家の悩みの種です。町は猟友会や農業者によるイノシシの捕獲を行っていて、罠を仕掛けるには町の許可と罠猟免許が必要だとしています。罠を見つけても触らないこと。湯河原クラブの野生動物の記事では、川堀でイノシシを捕る7人や、湯河原のイノシシと豚熱を取り上げてきました。豚熱は人には感染しません。

罠にかかったイノシシが皿に届くまでには、手間がかかります。ジビエを出す飲食店は、食品衛生法にもとづく食肉処理業の許可を取った施設で解体された肉を仕入れなければなりません。農林水産省の処理加工施設の名簿は、すべてを網羅したものではないと断ったうえで、神奈川県に8施設を挙げています。湯河原からいちばん近いのは箱根町と小田原市の施設で、湯河原町内の施設はありません。厚生労働省は、生や加熱不十分のシカ肉やイノシシ肉は、E型肝炎ウイルスや腸管出血性大腸菌、寄生虫による食中毒のおそれがあるとして、中心部まで十分に火を通すよう呼びかけています。町なかでは、「落合橋」バス停そばのビアスタンド かどやが、クラフトビールに合わせて鹿ジャーキーや猪ソーセージを出しています。

どこで味わうか

まとめると、湯河原で一年の恵みを味わう場所はそう多くありません。日曜観光朝市には干物と季節の柑橘。中央4-1-1のJA農産物直売所1号店は、月・火・木・土曜の8時40分から16時まで(土曜は12時まで、祝日は休み)。みなと食堂ではその日の魚を。秋は町のみかん狩り、2月は梅の咲く幕山公園、そしてビールとイノシシならかどやです。

白梅の枝の向こうに、紅白の梅が咲く斜面と木々の山
2022年2月末、幕山のふもとの梅林。写真: Matt Ketchum

かごも図鑑もいりません。山菜は山に、アワビは磯に残しておけば、獲るのも育てるのも料理するのも、この町の人たちがしてくれます。こちらが用意するのは時期だけ。梅なら2月、みかんなら秋、魚なら船が出た日の朝です。

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